おっちゃんのつぶやき25

「アンカー(⚓)揚がってしまいました~!!!」

これは超おまぬけな話。清水港沖にアンカー(錨泊)しておりました。私がセカンドオフィサー(二等航海士)に成りたてで,チォッサー(一等航海士)は実家が清水にあるということで帰宅中。

夜の二時ごろ叩き起こされ「北よりの強風が吹いてきて船が後ろに引けて,このままでは三保の松原にどしゃげるから(乗り上げる)から,セカンドオフィサー,舳先(おもて)に行ってボースン(甲板長)と一緒にアンカーを一旦巻き上げて,また打ち直してくれるかとのキャプテンからの命令,この方もキャプテンとして初仕事。

「はい!わかりました」と舳先に行ったものの,前方からの北風が強くて,自分の体を支えるのもやっとの状況。とにかく,アンカーを巻き上げるのですが,波しぶきでチェーン(鎖)の状態も見えない。授業や海技試験ではショートステイ(チェーンが水深の1.5倍になった状態)や立碇(たちいかり,アッペンダウンアンカー…アンカーが海面を離れる瞬間)になるとウィンドラス(巻き上げ機)の音が変わると習いましたが,こんな知識は何の役にも立たない。チェーンが前方にバンバンに張っている訳で,チェーンについている白色のマーク(このマークで水深に対して何メーター,チェーンが出ているのかが分かる)なんて,波しぶきでまったく見えない。チェーンは今水深との関係でどのようになっているのか?アンカーいつ揚がってくんねん?どうなってんねん?不安と知識がごちゃごちゃになる中で,いきなりアンカーが海面からガッサー,ドバーと音を立ててあがってきてしまい,

「キャプテン!!!アンカー揚がってしまいました!!!」

私も甲板長も慌てましたが,キャプテンの叫び声がもっと慌てておりました。このときのガッサーという感覚と音は今でも忘れません。

「フル・アヘッド!!!(全速前進)」ブリッジ(船橋)にいるキャプテンの慌てる声がマイクを通して舳先(おもて)まで聞こえてきます。何せ船を支える碇が揚がってしまっているわけで,このままでは船は後ろに下がるしかないわけですから・・・

ただ,何とか船は湾内で少し前に走り,そこでアンカーを打ち直し,事なきを得ましたが・・・今考えれば,あんな狭い湾内でフル・アヘッドはないですわな。緊急事態ですからしかたがありませんし,ぼんくらな私が舳先に立っているわけですから・・・

これは融通(他社の船にヘルプに行く)に行ったときの話で,キャプテンも怒るに怒れず,今となっては笑い話ですが,本当にご迷惑をおかけいたしました。「どうもすみませんでした。」

この船ではカリブ海に行きましたが,またまた私の間抜けな話が続くのです。では次回,イエッサ~

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