おっちゃんのつぶやき13

AIやらチャットGPTやら,便利といえば便利ですが,おっちゃんとしては,原則あっての便利さであることを忘れないでほしいと思っています。

私が船乗りであった頃,船長は太平洋戦争を生き残った方でした。アリューシャンからベーリング海付近を走っていても,毎日が濃霧で船首も何も見えない状態。ただ,GPSもない時代,大洋の真ん中で本船の位置を測位する方法は天測しかなく,その天測も太陽か星が見えて水平線も見えている必要がある。ところが,冬季,太陽はまず見えず,星などは論外,さらに舳先もみえないほどなので,水平線も見えず,ましてや船は大きくローリングして水平線は定まらない。ところが,ある時,一瞬,太陽が雲の切れ間から,顔を出しかけた。すかさず,ブリッジに駆け上がってきたキャプテンが,「サードオフィサー!時間とれ~」と叫ぶが早いか,天測するが早いか,とにかく六分儀を水平線とおぼしきあたりにめがけてスーとおろしてきて,水平線から太陽までの角度を測定。

「よし!昼の位置はここ!コース95度に設定!サードオフィサーたのんだ!」と言って,ブリッジをあとにした。

「あと数日で目的地のシアトルに着くとはいえ,この位置ほんまにあっとるんか?」と疑心暗鬼でしたが,目的地の岬がレーダーで捉えられるようになって逆算すると,この位置がほぼあっておるのです。

一瞬,太陽が顔を出すかどうか,水平線がまったく見えないにもかかわらず,本船の位置を,さも当たり前のように出す。

普段は厳しく,新人のサードオフィサーも何人もやめさせたという船長であると聞いていましたが,さすがというしかない。

私は面接でも,時々「飯の数」という言葉を使います。「心配するな,俺もだてに飯は食っておらん,本番の面接では思い切ってやっておいで,大丈夫や」と太鼓判を押すことがあります。

経験はAIにすぐるかなと思っています。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です